暮らしのヒント

空間をゆるやかに仕切るゾーニングアイデア

2026.3.20

春からの新生活にあたり、ご家族の環境に変化があった方もいらっしゃるのではないでしょうか。暮らしが変わるタイミングは、お部屋の使い方を見直すよい機会でもあります。

今回は、空間を用途や機能ごとにゆるやかに分ける「ゾーニング」についてお話しします。
皆さまの暮らしのヒントになるよう、できるだけわかりやすくお伝えしていきます。

はじめに「空間は広いほどいい」という定説は本当でしょうか。
少し極端な例ですが、倉庫のようなだだっ広い空間にソファセットを1組だけ置いた様子を想像してみてください。
余白が多すぎて、どこか落ち着かない印象になりませんか。広さがあるのに、なぜかくつろげない、そんな感覚を覚えるかもしれません。

実は人は、ゆるやかに仕切られた空間のほうが安心感を得やすいと言われています。壁を立てて物理的に分けるのではなく、家具やラグ、照明などで自然にエリアを区切ること。それが「ゾーニング」です。

では、ゾーニングをどのように暮らしに取り入れていけばよいのでしょうか。
日本の住宅では、リビングとダイニング、キッチンが一体となったLDK型が主流です。そのため、なんとなく家具を配置してしまうと、空間にメリハリが生まれず、のっぺりとした印象になりがちです。

それぞれの場所にはきちんと「役割」があります。その役割を意識して見せることで、空間はぐっと引き締まり、居心地も自然と整っていきます。

ダイニングゾーン

「ダイニング」は、家族で食事を囲む大切な場所です。
食事や会話に自然と集中できる空間にするには、どのような工夫があるでしょうか。

① エリアを強調する
ダイニングテーブルの足元にラグを敷くと、視覚的にエリアが切り取られ、空間にまとまりが生まれます。さらに、テーブルの上にペンダントライトを設置すると、視線が自然と惹きつけられフォーカルポイント効果が生まれます。それにより、ラグと照明でエリアに輪郭が生まれ、ダイニングの存在感はより高まります。

② 物理的にゆるやかに分ける
置き家具を使って空間をゆるやかに仕切る方法もおすすめです。ポイントは“高さ”の設定です。
ダイニングチェアに座ったときに視線を遮らない約1.3m程度までに抑えると、圧迫感も出にくく椅子に座ったままで部屋全体を見渡すこともできます。
収納棚や飾り棚を選べば、食器やカトラリー、茶器などを収めることができ、機能面でもとても便利です。
空間を区切りながら、使い勝手も向上させる、そんな一石二鳥のゾーニングになります。

リビングゾーン

「リビング」は、家族がくつろぐ場所であり、来客をもてなす場所でもあります。いわば“ハレ”と“ケ”が共存する、パブリックな空間です。では、そのような場所ではソファをどのように配置するとよいのでしょうか。

① ダイニングと視線を交差させない
ソファを景色のよい窓側へ向けて配置すると、ダイニングとの視線の交差が減り、心理的にもゾーンが分かれます。壁を立てなくても、自然とくつろぎに集中できる環境が整います。
それでいて、家族の気配はほどよく感じられる。この“つながりすぎない距離感”が、心地よさを生みます。

② 一人になれる居場所をつくる
2~3人掛けソファを置くのが定番ですが、北欧では一人用のアームチェアをそれぞれが持ち、並べて配置するスタイルも見られます。
座るだけで自分だけの小さなテリトリーが生まれ、必要に応じて動かすこともできる。家族との団らんと、一人時間の両方を大切にする考え方が表れたスタイルになります。
最近では日本でも、お子さまが独立されたご夫婦やDINKS世帯に好まれています。

③ ラグでやわらかく区切る
ダイニングと同様に、ラグでエリアを区切る方法も効果的です。肌ざわりのよいラグを敷けば、来客時に床に座って語らうこともできます。
私たち日本人は長く床座の暮らしをしてきたためか、床に近い位置に座ると、自然と心の距離も縮まるように感じられます。

④ 照明でゾーンを浮かび上がらせる
照明も、ゾーニングをつくる大切な要素です。デザイン性のあるシャンデリアを取り入れるのもよいですし、アームの長いフロアスタンドで光を一点に集める方法も効果的です。フロアランプやテーブルランプを点在させるだけでも、空間にリズムを作り出せます。

ダイニング側の照明を落とし、リビングのフロアランプだけを灯す。それだけで、くつろぎのゾーンがふわりと浮かび上がる、そんなイメージが浮かびませんか。

ソファやアームチェアで読書をするときは、手元の灯りになる読書灯だけを付けてみてください。周囲の暗がりが“見えない壁”となり、より深く集中できますよ。

[番外編]LDKを書斎として使うには

コロナ禍以降、在宅ワークは身近な働き方になりました。書斎があれば理想的ですが、日本の住宅事情では難しい場合も少なくありません。ダイニングで仕事をされている方も多いのではないでしょうか。
ただ、テレビや冷蔵庫などの日常の風景が視界に入ると、集中力が途切れてしまうこともあります。

そのような場合は、折りたたみ式のデスクパーティションを取り入れるのがおすすめです。デスク上に小さな“壁”をつくるだけで、驚くほど集中しやすくなります。これもまた、ゾーニングのひとつのテクニックです。

空間は、ただ広ければよいわけではありません。役割ごとにゆるやかに区切ることで、暮らしはもっと心地よく整います。空間を整えることは、暮らし方を整えることにもつながります。

春からの新生活。まずは、家具の向きや照明使い方を少し変えることから始めてみませんか。

山下智恵子
インテリアデザイナー
山下智恵子
【資格】
  • ・インテリアデザイナー
  • ・二級建築士

輸入家具会社や大手組織設計事務所、モデルルーム会社、百貨店内装会社を経て2013年に独立。
住宅、オフィス、店舗、などのインテリアデザインの他にインテリアセミナーの講師も行う。
https://www.estedit.com/