3月31日に“令和5年度税制改正”が正式に公表されました。
令和5年3月28日に通常国会において予算が成立したことにより、
同年3月31日に“令和5年度税制改正”が正式に公表されました。
税理士の森下正之です。
マイホームと税の番外編、「税制改正」についてご紹介します。
今回の税制改正において、目立った改正等はほとんどありませんでした。ただ、住宅取得関係で“土地の売買による所有権の移転登記等に対する登録免許税の税率”について、その軽減措置の適用期限が“3年延長”されました。
また、“上級編”で紹介しました以下の2点も延長されました。
◎直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置
→適用期限:3年延長
◎直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置
→適用期限:2年延長
なお、これらの非課税措置については、制度の内容が改正されていますのでご注意ください。
-------------------------------
資産税(贈与税・相続税)に関する税制について
今回は“令和5年度税制改正”の目玉と言われた資産税(贈与税・相続税)に関する税制についてです。
「贈与税の二つの制度」
贈与税には、“暦年課税”と“相続時精算課税”の2つの制度があります。気をつけて頂きたいことは、それぞれの改正の適用対象が“令和6年1月1日以後、贈与により取得する財産”となることです。
1.暦年課税制度とは
“暦年”は1月1日から12月31日までのことを指しますので、暦年課税制度とは、その年ごとの贈与財産に対して課税する制度のことを言います。
暦年課税の基礎控除額は“110万円”なので、その年における贈与財産が110万円以下であれば、納税額はありませんし、贈与税の申告も原則不要となります。
この制度の注意点は、相続開始前3年以内に取得した贈与財産については相続財産に加算しなければならない点です。なお、令和5年度税制改正において、相続開始前7年以内と改正されています。
富裕層対策として相続財産に加算する期間が長くなったわけですが、贈与のやり方によってはあまり意味が無いようです。
加算する必要がない場合
“お孫様”への贈与財産であれば加算する必要が無いようです。
なぜなら、“相続財産に加算”しなければならない対象者は、“相続又は遺贈により財産を取得した者”つまり“相続人”であるので、相続人以外の者であれば“相続財産に加算”する必要が無いのです。
注意点: “お孫様”は推定相続人であり相続人ではないのですが“お孫様へ遺贈”するような場合は加算しなければなりません。さらに“お孫様への贈与”に対する国税庁や税務署の定義(認識や見解)には、一定の基準があるので留意してください。
2.相続時精算課税制度とは
相続時精算課税制度とは、平成15年度に導入された制度で、その名の如く“相続時に贈与財産を持ち戻して精算する課税制度”のことを言います。
相続時精算課税の基礎控除額は“2,500万円”ありますので、贈与財産がその範囲内であれば税金は発生しません。ただし、基礎控除額を超えた場合には一律20%の税率で贈与税をいったん納める必要があります。
まとめ
令和5年度税制改正において、資産移転の時期の選択により中立的な税制を構築する必要性から、“暦年課税の基礎控除とは別途の措置”として、毎年110万円までは課税しないこととされました。
一方で相続時精算課税制度は“選択制”なので、いったん相続時精算課税制度を選択してしまうと暦年課税制度には戻れません。なので、選ぶ際にはしっかりと吟味してから選ぶ必要があるでしょう。
--------------------------------
ピックアップ ポイント! <税制改正大綱と税制改正について>
毎年12月下旬に次年度の税制改正大綱が閣議決定し、翌年1月中旬に通常国会が召集され次年度の予算が審議が行われます。そして3月下旬に予算が成立して税制改正大綱から正式に税制改正として公表されます。
税制改正大綱は、あくまでも“案”であり正式なものではありませんが、政府=与党の政権下においては、ほぼ税制改正大綱がそのまま税制改正になっているのが現状です。
“マイホームと税”住宅取得等に関しては様々な優遇税制や措置があり、それぞれ適用期限と毎年多少の改正があります。損をしないマイホーム取得のために、優遇税制等に関する情報をいち早く得る手段として税制改正大綱を活用することをお勧めします。
“マイホームと税”について、もっと知りたい方は、次回のセミナーに是非ご参加ください!
次回開催の予定は、こちらでご確認いただけます。
セミナー情報はこちらから→
- ・平成17年12月9日 第55回税理士試験 官報合格
森下正之税理士事務所 所長
tvkハウジングプラザ横浜がセミナーを開始した平成21年7月当初から登壇し、住宅に関わるセミナーを多数開催。大手生命保険会社などでも、相続セミナーなどの実績あり。